腸腰筋の筋トレ
腸腰筋に効果的な筋トレとストレッチ
腸腰筋の構成と鍛えるメリットも紹介
本記事では腸腰筋を鍛えるメリットを紹介した後に、自宅で効果的に鍛える筋トレメニューやストレッチを紹介しています。
腸腰筋は身体の深くに位置しており、歩行時における股関節の曲げ伸ばしや体幹の安定など、
身体の動きにおいて重要な役割を担っているインナーマッスルです。
つまずきや足の重さを感じる方は、腸腰筋を鍛えることで改善が期待できるでしょう。
記事の後半では腸腰筋の鍛え方を難易度別に紹介しているため、取り組みやすいものからぜひ実践してみてください。
1 腸腰筋の構成と役割
腸腰筋は、腰から脚の付け根に位置する大腰筋・小腰筋・腸骨筋の3つの筋肉の総称です。
身体の深い場所に位置しており、歩行時の股関節の曲げ伸ばしや体幹の安定など、重要な役割を担っているインナーマッスルです。
以下では、腸腰筋を構成する筋肉とその役割を紹介します。
大腰筋(だいようきん)
大腰筋は、背骨と大腿骨をつなぐ筋肉です。
太ももを引き上げる動作に使われる筋肉で、歩くときや階段を上るときなどをはじめとして、日常的に多く使われる筋肉です。
また上半身と下半身をつなぐ数少ない筋肉のひとつで、体幹を安定させるなど重要な役割を果たします。
小腰筋(しょうようきん)
小腰筋は背骨と骨盤をつなぐ筋肉で、大腰筋の動きをサポートする筋肉です。
大腰筋と同様に、歩く・走る・階段を上るといった日常動作や、体幹を安定させる役割があります。
小腰筋は大腰筋に比べて小さく、なかには小腰筋がついていない人もいると言われており、小腰筋だけが担う特定の機能は限定的であると考えられています。
腸骨筋(ちょうこつきん)
腸骨筋は腸腰筋のなかで最も奥にある筋肉で、骨盤の前傾や、太ももを引き上げて股関節を曲げる働きがあり
ます。
歩行や階段の上り下りといった、日常動作で重要な役割を担う筋肉です。
腸骨筋は骨盤の内側から大腿骨についており、大腰筋や小腰筋と違って背骨には付着していないことから体幹の維持には関与していません。
2 腸腰筋を鍛えるメリット
腸腰筋を鍛えることで、腰痛の予防や姿勢の改善、体幹の安定といったメリットが期待できます。
インナーマッスルである腸腰筋は深層にあるため見た目や手触りでは確認しづらいですが、鍛えることで大きなメリットがあるため、ぜひ把握しておきましょう。
腰痛を予防できる
腸腰筋を鍛えることで、腰痛予防の効果が期待できます。
腸腰筋を鍛えることは、骨盤を前傾させて背骨の自然なS字のカーブをキープすることにつながります。
背骨がS字のカーブを維持できると、重力の負荷が背骨全体に分散され腰への負担を減らすことができます。
このように、腸腰筋を鍛えることで腰痛の予防が期待できるでしょう。
姿勢が良くなる
腸腰筋を鍛えることで、姿勢が良くなるメリットもあります。
上述したように、腸腰筋を鍛えることは自然なS字姿勢の維持につながるため、姿勢の改善が期待できるでしょう。
腸腰筋が衰えると、骨盤を上手くコントロールできず前方や後方に傾いてしまい、反り腰や猫背にもつながります。
特にデスクワークが中心の方など姿勢の崩れが気になる方は、意識的に腸腰筋を鍛えて良い姿勢をキープできるようにしましょう。
また、腸腰筋を鍛えることで骨盤の歪みを解消できると同時に、内臓を正しい位置にキープできるようになるため、ぽっこりお腹の解消も期待できるでしょう。
体幹が安定する
上半身と下半身をつなぐ筋肉である腸腰筋を鍛えることは、体幹の安定にもつながります。
体幹が安定すると身体のバランスが整って足を踏ん張りやすくなるため、スポーツパフォーマンスの向上や、ふらつき・転倒の予防も期待できるでしょう。
3 腸腰筋を鍛えるためにおすすめの筋トレ
この章では、自宅で手軽に腸腰筋を鍛えることができる筋トレメニューを紹介します。
難易度が低い順にトレーニング方法を紹介していますので、運動初心者や高齢者の方はご自身のレベルに合ったものから順にお試しください。
インナーマッスルに分類される腸腰筋は、見た目や手触りからは鍛えた効果を実感しづらいですが、地道に取り組むことが重要です。
撮影協力:SIXPADオフィシャルトレーナー KENTA
■ 椅子を使ったニーアップ(もも上げ)
椅子を使い座った状態で取り組めるニーアップは、ひざや腰に痛みを感じる方でも安心して取り組める筋トレのひとつです。
テレビやスマホを見ながら取り組むことも可能で、気軽に始められるでしょう。
- 鍛える筋肉:大腰筋・小腰筋・腸骨筋
- 効果:歩行の安定・つまずき防止
- 難易度:1(5段階評価)
- おすすめの方:足腰に不安のある方・高齢者
-
1.
背もたれから背中を離した状態で、椅子に浅く座る。
※手は椅子の座面を持って身体を安定させましょう。 -
2.
骨盤は真っすぐ立てた状態をキープし、片方の太ももを上げ下げする。
※太ももを上げるときは、ももをお腹に近づけるイメージで行いましょう。 -
3.
交互に20~30回、3セット行う。
■ ニートゥチェスト
ニートゥチェストは、腹直筋(主に下部)・腸腰筋を中心とした腰周りを鍛えるトレーニングです。
下腹部を鍛えるトレーニングは腰への負担が大きいものが多いですが、ニートゥチェストは比較的負担が軽いトレーニングのため、初心者でも安心して実践できるでしょう。
- 鍛える筋肉:大腰筋・小腰筋・腸骨筋・腹直筋
- 効果:下腹部の引き締め
- 難易度:2(5段階評価)
- おすすめの方:下腹がぽっこりしている方、猫背が気になる方
-
1.
両脚を伸ばした状態で床に座り、両手は身体の後ろに置く。
-
2.
胸に向かって引き寄せるイメージで両ひざを曲げる。
-
3.
脚を真っ直ぐ伸ばす。
※このとき、脚は地面に付けないように意識しましょう。 -
4.
2~3を10×3セット行う。
■ レッグレイズ
レッグレイズは、下腹部全体をダイレクトに刺激して鍛えることができるトレーニングです。
腹筋が大きく伸び縮みするため、少々きつく感じるかもしれません。
回数やインターバルなどを調整し、無理なく行いましょう。
- 鍛える筋肉:大腰筋・小腰筋・腸骨筋・腹横筋
- 効果:下腹部の引き締め・骨盤の歪み改善
- 難易度:3(5段階評価)
- おすすめの方:猫背や反り腰が気になる方、下腹がぽっこりしている方
-
1.
脚を伸ばして仰向けになり、手は身体の横かお尻の下に置く。
-
2.
脚をそろえた状態で、脚を天井に向かって真っすぐ上げる。
-
3.
息を吐きながら、脚を床につくギリギリのところまでゆっくり下ろす。
※脚を下ろすときは腰が反らないように気をつけてください。 -
4.
2~3を15回×3セット繰り返す。
■ バイシクルクランチ
バイシクルクランチは、腸腰筋・腹直筋・腹斜筋を中心とした腰周りの筋肉を鍛えるトレーニング
です。
交互に脚を引き上げるフォームが自転車を漕ぐ様子に似ていることから名づけられたとされています。
身体を捻る動作を伴うため、腰への負担はやや高めです。
運動強度も高いため、無理のない範囲で実践しましょう。
- 鍛える筋肉:大腰筋・小腰筋・腸骨筋・腹斜筋・腹直筋
- 効果:くびれづくり・姿勢維持
- 難易度:4(5段階評価)
- おすすめの方:ウエスト周りをすっきりさせたい方
-
1.
仰向けに寝た状態で、両手を耳の後ろに添えるように置き、頭を浮かせる。
両脚を浮かせ、床から垂直になる位置で止める。 -
2.
片方の脚を浮かせたまま真っすぐ伸ばし、反対の脚はひざを曲げて胸元に引き寄
せる。 -
3.
身体を捻りながら、引き寄せた脚のひざを反対のひじに付ける。
-
4.
2~3を左右を入れ替えながら10回×2~3セット行う。
■ フロントランジ
フロントランジは、股関節を大きく動かして下半身を鍛えるトレーニングです。
脚の筋肉のトレーニングというイメージが強いかもしれませんが、実は腸腰筋の作用も大きく関与する筋トレの一つ
です。
姿勢を保ちながら股関節を動かすことが必要とされるため、上半身と下半身を連動させ、歩く・走るなど、日常の動作の安定につながります。
片脚重心になるため、バランスがとりづらく感じる場合は、椅子の背もたれや壁を使って無理なく行ってみてください。
- 鍛える筋肉:大腰筋・小腰筋・腸骨筋・大腿四頭筋・大臀筋・ハムストリング
- 効果:体幹の安定・上半身と下半身の連動
- 難易度:5(5段階評価)
- おすすめの方:つまずき防止・マラソンなどのパフォーマンスを向上したい方
-
1.
足を揃えて真っすぐ立つ。
-
2.
上体を真っすぐに保ったまま、片足を大きく前に踏み出して股関節とひざを曲げ、前に出した方の足に重心を乗
せる。 -
3.
前に出した方の足の裏で床を押し、1に
戻る。 -
4.
足を入れ替えて2~3を左右10回×3セット行う。
4 腸腰筋に効果的なストレッチ
腸腰筋は、鍛えるだけでなくストレッチをして伸ばすことも大切です。
ストレッチで腸腰筋を伸ばすことで固まっていた腸腰筋がほぐれ、柔軟性の向上や血流の改善、可動域増加に伴う代謝の向上が期待できるでしょう。
筋トレをすると股関節や腰に痛みが出る方は、まずはストレッチからはじめてみるのもおすすめ
です。
寝たまま行える簡単なストレッチも紹介していますので、ご自身のレベルや体調に合わせて無理せず取り組みましょう。
■ 太もも抱き寄せストレッチ
太もも抱き寄せストレッチは、仰向けで行える簡単なストレッチです。
足腰に不安のある方でも、寝転がった状態で腸腰筋のストレッチができるため気軽に取り組め
ます。
太ももを身体に引き寄せているときは、深くゆっくり呼吸を繰り返すことがポイントです。
-
1.
仰向け状態になり、脚を真っすぐに伸ばす。
-
2.
両手で片ひざを抱き寄せるように抱え込み、もう片方の脚は真っ直ぐ伸ばした状態をキープする。
-
3.
抱き寄せた太ももを身体にくっつけるイメージで、20〜30秒キープする。
※しっかり呼吸を繰り返しましょう。 -
4.
抱き寄せた脚を元に戻し、反対の脚で同じ手順を行う。
■ コブラのポーズ
コブラのポーズは、ヨガのポーズのひとつです。
胸を前に向けることで、腸腰筋と前ももを同時にストレッチできます。
腰が反ってしまわないように気をつけて行いましょう。
また腰に違和感を感じる方は、無理せず行うようにしてください。
-
1.
うつ伏せの状態になり、足は肩幅程度に開いておく。
-
2.
肩の真下に手を置き、手のひらで床を押しながら上半身を起こす。
-
3.
胸を張った状態で呼吸を繰り返し、お腹前面の伸びを感じながら30秒ほどキープする。
-
4.
息を吐きながら上半身を床方向に戻す。
-
5.
2~4を3セット繰り返す。
■ ひざ立ちストレッチ
ひざ立ちストレッチは腸腰筋と前ももを同時に伸ばすことができるストレッチです。
前述した2つのストレッチよりも筋肉の伸びを大きく感じられる一方、片脚重心になるため難易度は少し上がります。
バランスをとるのが難しい方は、壁につかまりながら行いましょう。
-
1.
ひざで立ち、足は腰幅程度に開く。
-
2.
片方の足をひざが90°になるように前方へ踏み出す。
-
3.
前へ出した足のももの上に両手を置き、重心を前へ移動する。
-
4.
前もも・股関節の付け根・下腹部の伸びを感じたら、呼吸を繰り返しながら10秒キープする。
-
5.
ゆっくり2の姿勢へ戻り、脚を入れ替えて2~4を繰り返す。
5 まとめ
本記事では、腸腰筋を鍛えるメリットや腸腰筋の筋トレ方法に加え、腸腰筋のストレッチ方法を紹介しました。
腸腰筋は深層に位置するインナーマッスルに分類され、見た目の変化に直接影響を及ぼす筋肉ではありませんが、日常動作にも大きく関わる重要な筋肉です。
スポーツや競技のパフォーマンス向上だけでなく、歩行や階段の上り下りなどの快適な日常を送るためにも、本記事で紹介したトレーニングやストレッチを取り組んでみましょう。